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Update : Fep.29.2000 |
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1998年3月末に自動車事故対策センターより公表された
「1997年度 前面衝突安全性能試験結果」を再評価します。
【衝突試験結果一覧(1997年度)】
車名 排気量 グレード | 運転席 | 助手席 | PT | FL | FB | デビュー | 変更 |
ホンダ ロゴ 1300 G 3ドア | AA | AA | − | − | ○ | 1996.10 | − |
日産 マーチ 1000 コレット 5ドア | A | A | ○ | ○ | − | 1992.-1 | 1997.-5 |
トヨタ スターレット 1300 ルフレf 5ドア | A | AA | ○ | ○ | − | 1996.-1 | 1997.12 |
マツダ デミオ 1300 LX(G) | AA | A | − | − | − | 1996.-8 | 1997.-9 |
日産 サニー 1500 スーパーサルーン | A | AA | ○ | ○ | − | 1994.-1 | 1997.-5 |
日産 ブルーバード 1800 ルグラン | A | AAA | ○ | ○ | − | 1996.-1 | 1997.-9 |
ホンダ オルティア 2000 GX | A | A | − | − | ○ | 1996.-2 | − |
トヨタ マーク2 2000 グランデ | A | A | − | ○ | − | 1996.-9 | 1997.-8 |
メルセデス・ベンツ Cクラス 2000 C200 | A | A | ○ | − | − | 1993.-4 | 1997.-8 |
三菱 レグナム 1800 ST | AA | A | − | − | ○ | 1996.-8 | − |
日産 ローレル 2000 メダリスト | AA | AA | ○ | ○ | − | 1997.-6 | − |
ホンダ ステップワゴン 2000 G | A | A | − | ○ | − | 1996.-5 | − |
トヨタ クラウン 2500 ロイヤルサルーン | A | AA | ○ | ○ | − | 1995.-9 | 1997.-7 |
日産 セドリック 3000 ブロアム | A | AA | ○ | ○ | − | 1995.-6 | 1997.-6 |
※ | PT | ・・・ | シートベルト・プリテンショナー |
※ | FL | ・・・ | シートベルト・フォースリミッター(またはロードリミッター) |
※ | FB | ・・・ | ヒューズベルト |
※ | 全試験車は、運転席&助手席エアバッグを装備。
空欄は調査中。 装備はテスト時のものです。テスト後に追加や変更が行われている場合があります。 |
【あいかわらず今回も・・・】
あいかわらず今回もAだのAAだのといったアルファベット評価はHIC(頭部傷害値)と胸G(胸部合成加速度)の計測値を単純にあてはめているだけで、下肢や車両の構造については考慮されていないか、故意に無視しているようである。
HICと胸Gを低くするためにはベルトをゆるめて体を前に出してやるのがよいのだが、そうやって身体が前進するとダッシュボード下部に膝が深く当たる事になる(ダッシュボード下部がそれを見越した設計となって衝撃吸収のための構造を採ってあればよいが、いささか非現実的な仮定である)。
また、衝突の際にブレーキペダルを踏んでいる機会が少なくない事を考えると、身体が前進する事はドライバーの右足に大きな力が掛かる事になる。 その上、フロアの変形が大きくブレーキペダルの突出も大きいと、右足はひどく危険な状態になる。
HICと胸Gの値は低いにこした事はない。
しかし、ダッシュボードが車室内に大きくずれ込んでいるほどキャビンが弱いクルマや、キャビン前方もクラッシャブルゾーンと化していて足元フロアの変形が大きくブレーキペダルの突出量も多いクルマや、ヒューズベルトで場当たり的にHICと胸Gの値を下げているクルマにAAやAAAが付けられているのを見ると、果たして「低いにこした事はないものの、そこまで低くなくても差し支えがないような値」を「下肢傷害の危険性が高い事」とトレードオフするだけの価値があるかどうかを一考する必要があると思う。 でなければ、実際の事故の事などお構いなしの、弱いキャビンでヒューズベルトを装着した「国内テスト偏重設計」の危険で脆弱なクルマがまかり通る事態になりかねない。
とにかく今回も、海外のテストの★★★★といった総合評価とは同列に扱わないほうがよさそうである。
拙速な乱文ではあるが、ざっと目を通して気になったところを速攻版として書き留めておく事とする。
※ 傷害基準値(HIC=1000,胸G=60)に収まっているクルマには A評価 が、HIC<500 または 胸G<45 のどちらか片方を満たしているクルマには AA評価 が与えられている。 両方を満たしている場合は AAA評価 になる。
【ロゴ と スターレット】 [Apr.23.1998]
ホンダ ロゴは[AA/AA評価]で、トヨタ スターレットは[A/AA評価]だった。
「トヨタはGOAとか言って宣伝しているけど、本当はホンダのロゴの方が衝突安全性が高かったんだなぁ」などと思った人は日本の中に少なからず居るはずだが、実際に小型車を買うときにアルファベット評価に基づいてロゴを買ったり他人に薦めたりするのが本当に正しい選択なのだろうか?
▼ ホンダ ロゴ
ホンダ ロゴは両席ともAA評価であった。
評価の文章には足元フロアの変形,左側ルーフ中央部とサイドシルの変形,ヒューズベルトによるダミーの前方移動が指摘されていた。 これらを基にして、もう少し詳しく取り上げてみる。
【解説】
【寸評】
【補足】
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▼ トヨタ スターレット
トヨタ
スターレットは運転席がA,助手席がAA評価であった。 評価の文章には足元フロアの変形(運転席側は比較的少ない)が指摘されていた。
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【解説】
【寸評】
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▼ 2つの計測値の比較
私が書いた上記の文章「だけ」を読んだ人にはロゴはスターレットよりも劣っているようにしか見えないはずだが、試験を行った自動車事故対策センターのアルファベット評価「だけ」を見るとロゴはスターレットに勝っているように見える。 両者の評価が逆転している理由は、自動車事故対策センターが頭と胸の2点の計測値のみを評価対象に限定している事にある。
車名 | 座席 | HIC(頭部障害値) | 胸G(胸部合成加速度) |
ロゴ | 運転席 AA | 596 | 44.2 |
助手席 AA | 548 | 44.7 | |
スターレット | 運転席 A | 675 | 54.1 |
助手席 AA | 426 | 47.3 | |
傷害基準値・・・HIC=1000,胸G=60。 この値を超えなければ重大な障害を受ける危険性は低い。 |
もしも数値以外の条件に大差がないのであれば「数値が小さいクルマの方が安全性は高い」と容易に断言できるが、ロゴとスターレットの間にはさまざまな違いがある。 例えば運転席同士を比較すると、スターレットは頑丈なキャビンと身体を拘束するシートベルト備える代わりにHICと胸Gがいささか高めとなってA評価に留まっている。 ロゴは変形多大なキャビンと身体の拘束を半ば放棄するヒューズベルトのおかげで特に胸Gを下げることができAA評価となっている。
▼ どちらを選ぶか
ここからは、あなた自身が判断しなければならない。
路上ではもっと大きなクルマとぶつかったり、車体の変形量が大きいオフセット衝突が起こる事もある。 脚や身体が潰される事よりも少しでもHICや胸Gが少ないクルマを選ぶか、それともHICや胸Gの値が、危険性が低いレベルにおさまっていれば脚や身体をまともに保護するべく作られているクルマを選ぶか・・・?
もちろんクルマは衝突安全性だけで選ぶものではなく、価格やデザインやシートや燃費や筑波サーキットのラップタイムなどさまざまな要素の中のひとつに過ぎない。 最後に決めるのは、貴方自身の判断である。
- MEMO - 今回のテストのようなフルラップ正面衝突試験はダミーに与える衝撃は最も強い。 一方、オフセット衝突試験は車体の変形が大きく、乗員への加害性評価に適している。 |
何度も書いてひつこいようだが、AAといったアルファベット評価は頭部と胸部のみを対象にしたものであり、総合的な評価ではない。 このロゴの例で、AAという評価が総合的な優秀さをあらわすものではない事がわかっていただけると思う。 「AAだから安全なクルマなんだ」と短絡的に買ったり他人に薦めたりしない事をおすすめする。
【おまけ】
1.ブレーキペダルの後退 [Nov.08.1998]
衝突時にはブレーキペダルを踏んでいる事が少なくない。 その際、ドライバーの体重はブレーキペダルを踏んでいる右足に集中しがちとなり、右足の損傷リスクが高まる。 衝突時にブレーキペダルが後退すると右足の損傷リスクが一層大きくなるため、衝突時にはブレーキペダルが脱落するように設計されているクルマも一部にある(例えば日本車ならトヨタ・プログレのカタログでその説明を見ることができる)。
![]() ブレーキペダルの移動 ブルーバードは衝突時にブレーキペダルが跳ね上がっており、右膝がステアリングコラムかステアリングホイールに接触する可能性が高い。 |
助手席AAA評価をとった日産ブルーバードだが、運転席のブレーキペダルは、まるで跳ね上げ機構が採用されているかのような後退が目立つ。 運転席はA評価となっているが、他のA評価のクルマと比べてかなり危険である。 サニーも同様の傾向が見られ、もしかすると日産の横置きエンジンFF車に共通する現象かもしれない。
2.ホンダ・キャパのエンジンキー [May.10.1998]
4月末にデビューしたキャパを見に行ってきた。 エンジンキーがロゴ同様、ステアリングコラムの右横に位置している(詳しく確認はしなかったが既存車種と共用かもしれない)。 ブレーキペダルを踏んだまま体を前にずらし、衝突したときの事を想像してみた。 右膝はステアリングコラムに当たるが右側にそれてキーの側に来る。 衝突時にはクルマが前のめりの姿勢をしめすとともにドライバーの体は地面とほぼ平行に前方へ移動することを考えると、右膝がキーに強く当たる可能性はとても高そうだ。
ホンダ CR-Vのエンジンキーが膝に当たる危険性は、このホームページで私が昨年指摘した。 しかし、いろいろな雑誌を見た限りでは同様の指摘を見つける事ができなかった。 その結果、ホンダはCR-Vが持つ危険性を認知する事がなく、キャパも同様の危険性をかかえたままデビューしてしまった。 自動車事故対策センターの怠慢と自動車ジャーナリズムの無能と自動車メーカーの無知が三位一体となり、何も知らないユーザーは気づかないままに危険なクルマを買う・・・。
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