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Update : Sep.25.2003

西部警察ロケ事故解説(仮)

■ もしもブレーキをかけていたら?(1)

 前ページの最後では、概ねの車速と、殆ど減速していない事の二つがわかった。
 それでは、もしも意図的にブレーキをかけて減速した場合は、どのような結果になっていただろうか?


図2(再掲):タスカンの走行速度
(図をクリックすると、別ウインドウで表示できます)
車速(参考値)
A地点:36.5km/h, B地点:36.5km/h, C地点:31.9km/h

 ところで自動車は、どの程度の距離で停止できるのだろうか?
 テスト時の路面条件や、空走距離を含めるかどうかなどによっても結果が変わってくるが、例えば手元にある最近のCG誌には、次のデータがある。

車名 50km/h→停止 100km/h→停止 ROAD TEST 掲載誌
日産フェアレディZ 10.3m (1.4秒) 37.5m (2.6秒) No.420 CG 2002-11 P121
マツダRX−8 9.8m (1.3秒) 36.0m (2.6秒) No.422 CG 2003-06 P62

 他には、自動車事故対策センターで100km/hからの停止距離を計測しているものがある。 例として、1999年度試験でのトヨタ・ヴィッツは、乾燥路面で45.8m,湿潤路面で49.6mというデータがある。
 また、一般論として、車速が2倍になれば停止距離は4倍になり、車速が1/2になれば停止距離は1/4になる(※車速の大小にかかわらず減速中の加速度 を一定とする場合、停止距離は車速の2乗に比例する)
 これらより、例えば湿潤路面(=濡れた路面)で100km/hから49.6mで停止するヴィッツの場合、40km/hからであれば7.936mで停止し、36km/hからであれば6.428mで停止することになる。

 図2では駐車枠を縦5m,駐車枠と駐車枠との間隔を6mとしており、B地点から観客席までの直線距離は11mとしている。
 ゼブラゾーンで滑りやすいといっても濡れた路面よりはマシだろう、かつ、タスカンの減速能力はヴィッツと同等以上という事にするならば、もしもB地点でフルブレーキをかけていれば、観客席に突っ込む前に余裕で停止できていた 事になる。

■ もしもブレーキをかけていたら?(2)

 フルブレーキをかけていれば余裕で停止できていた事は確かだが、多くのドライバーは、いざという時にフルブレーキが踏めないという(…ので、ブレーキアシストという装備が開発された)。 フルブレーキが踏めなかったとして、果たしてどの程度の強さのブレーキであれば停止できていただろうか?

 減速や加速の度合いは「G (ジー:重力加速度)」という単位で表す。 現在は公式には使用しては いけない単位らしいが、クルマの世界では慣用的に使用されつづけている。 「G」とは重力加速度で、地球上で物体が落下するときに加速していく度合いが1Gである。

 前述のフェアレディZやRX−8が100km/hから停止した時の平均の加速度(減速度)は、それぞれ1.049G,1.092Gに達する。 ヴィッツの例であれば、乾燥路面で0.859G,湿潤路面で0.793Gである。
 他には、TVRタスカンSが時速100マイルから4.15秒で停止したテスト結果があるが(AUTOCAR JAPAN 2003-10 P63)、この時の平均の加速度は1.092Gである。

 最大の減速の度合いの目安となる値が得られたので、いくつかの強さで減速する場合の停止距離と所要時間を表にしてみる。

40km/h→停止
(参考値)
36.5km/h→停止 31.9km/h→停止
1G 6.29 m
(1.13秒)
5.24 m
(1.03秒)

4.00 m
(0.90秒)

0.8G 7.87 m
(1.42秒)
6.55 m
(1.29秒)
5.00 m
(1.13秒)
0.6G 10.49 m
(1.89秒)
8.74 m
(1.72秒)
6.67 m
(1.51秒)
0.5G 12.59 m
(2.27秒)
10.48 m
(2.07秒)
8.01 m
(1.81秒)
0.4G 15.74 m
(2.83秒)
13.10 m
(2.58秒)
10.01 m
(2.26秒)

 例えば36.5km/hから0.5Gで減速すれば、10.48mで停止できる。 図2のC地点からでは間に合わないものの、B地点からブレーキを踏んでこの強さで減速すれば、観客に突っ込む前にギリギリで停止できていた事になる。
 この0.5Gがどれほどの強さ(弱さ)のブレーキなのかは、36.5km/hから約2秒かけて停止してみる事で、容易に体感できる(助手席に誰かが乗っていたら、1秒ごとに手拍子でも打ってもらうといいだろう)。 おそらく多くの人は、「せめてこの程度のブレーキぐらい、踏めよ・・・」と呆れる事だろう。

 ついでに、C地点の通過速度は31.9km/hだったが、ここから0.8Gで減速すれば、観客に突っ込む前に停止できていた事になる。  これはフルブレーキ級の強さではあるが、タスカンの性能なら容易な事だ。

 ここから、重大な教訓が得られる。 運転経験が浅いのなら・・・
 まずは、スピードを殺せ!

 

(続く)

   「仮」とはいえ、少しづつしか加筆できていない所がショボい・・・


 

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