ハイブリッド(HYBRID)とは合成,結合,混血などという意味である。 自動車の場合は、複数の動力源を備えたクルマを指す。
最も身近なハイブリッド・カーはガソリンエンジンと電気モーターを備えたもので、世界初の量産ハイブリッド乗用車であるトヨタ・プリウス〔1997年12月発売〕やホンダ・インサイト〔1999年11月発売〕がある。
その他の例として、減速時に蓄えた圧力を動力源とする蓄圧式ハイブリッド(路線バス用の車両に採用)がある。 また、1975年の東京モーターショー出品車でガスタービンエンジンと発電機とモーターを備えたトヨタ・センチュリー・ハイブリッドというのもあった。
ここではエンジン+電気モーターのハイブリッドカーについて少し書くことにする。
モーターの利点の一つに回生ブレーキがある。 モーターは発電機としても使えるので減速時にはモーターで発電し、その電力をバッテリーに充電する。 難しい表現をすれば、回生ブレーキとは『(走行中の自動車が持っている)運動エネルギーを電気エネルギーに変換して減速すると共に、バッテリーに充電する装置』である(※電車の場合は架線に電力を戻す)。 ちなみに通常のブレーキは『運動エネルギーを熱エネルギーに変換して減速すると共に、大気中に放散させる装置』である。
ハイブリッドカーがモーターや走行用バッテリーといった“余分な”重量物を搭載しているにもかかわらず燃費がいいのは、回生ブレーキによって減速時に充電した電力で発進時や加速時にモーターを回す事により燃料を節約できるからである。
【注】 走行用バッテリーの他に、通常の12Vバッテリーも備えている。 例えばプリウスの走行用バッテリーは288Vもある。 ヘッドライトなどの灯火類やカーステやエンジン制御用コンピューターなどは普通のクルマと同様に12Vバッテリーで動かしている。
ハイブリッドカーの燃費の良さが回生ブレーキにあるのであれば、都市部の赤信号と青信号の繰り返しのように減速・停止と発進・加速が繰り返される場面では、燃費の大幅な向上が期待できる。 一方、一定の速度で走行しつづける走行パターンの郊外〜田舎や高速道路では、回生ブレーキによる燃費の向上はあまり期待できない。 燃費のよさを目的に購入する場合は、ちょっとだけ注意。
回生ブレーキ以外のハイブリッドカーの利点として、エンジンを出力よりも燃費を重視した設計・設定にできる事がある(※話はそれるが、レーシングカー向けに、より強力な加速を得るために使う事もある。 通称「電気ターボ」)。
また、エンジンの効率の悪い回転域をなるべく使わないようにする事も可能である。 エンジンは燃費や排ガス面で有利なよう、ほぼ一定の回転数で運転させ、加速時はバッテリーに蓄えられた電力でまかなう。
『ハイブリッドカーは電気自動車の“つなぎ”でしかない』などとハイブリッドカーを軽んじるような表現をする者もいるが、現時点のレベルではガソリン/ディーゼル自動車から電気自動車へは“つながる”とは言い難い。
現時点でのハイブリッドカーの重要なメリットとして、普通の自動車のように容易に燃料の補給ができるという点がある。 「ガソリンスタンド」は山ほどあっても「電気スタンド」はまだほとんど存在しないからだ(※もしも貴方が電気自動車を渡されて「このクルマで一週間ほど、どこか遠くに旅行に行って来い」と言われたら、旅行先で充電ができるかどうか心配で二の足を踏んでしまうことは必至だ)。
燃料の補給時間が短いことも利点である。 ガソリンや軽油の補給時間に比べると充電時間は遥かに長いからだ。
将来の主流は電気自動車と言われている。 そのための電力は、外部からバッテリーへの充電か、燃料電池による発電が有力視されている。
いずれの方式が主流になろうとも、現時点でハイブリッドカーを量販して公道上を走らせて「電気自動車のノウハウ」を得ておくことは決して無駄ではない、と私は思う。
【燃料電池】 車両に搭載した水素と、空気中の酸素を反応させて発電する装置。 気体となった水素と空気中の酸素とを「イオン交換膜」を隔てて隣接させると、水素が陽イオンとなって「イオン交換膜」を通り抜けて酸素側に移動して酸素と反応して水となると共に、水素側にマイナス,酸素側にプラスの電荷が溜まり、水素側と酸素側の間に電圧が発生する。
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