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Update : Feb.29.2000

衝突テストの再評価
AA評価のクルマは本当に優秀なのか?

 

1997年2月〜3月ごろに自動車事故対策センターより公表された
「1996年度 前面衝突安全性能試験結果」
を再評価します。

- C O N T E N T S -

■ まえがき ■ 前面衝突試験とは… ■ 衝突テストの再評価 ■ おなじ評価でも大違い! ■
■ 評価ぶりへの評価 ■ あるテストとの比較 ■ 本当に優秀なのは? ■ あとがき ■

 

 


【まえがき】

 1997年2月末の一部新聞や3月末の自動車雑誌、そして JAF MATE 1997年6月号 などで「1996年度 前面衝突安全性能試験結果」の記事が掲載され、A や AA といった “アルファベット評価” が記されていました。 この記事を読んで「AAのクルマが最も安全だ」とか「AAのクルマの方がAのクルマよりも頑丈だ」と思った人は少なからずいるはずです。
 しかし私が雑誌の記事や写真、そして自動車事故対策センターのホームページを見た限りでは「AA のクルマは A のクルマよりも安全性に優れている」とは容認しがたい部分も見られました。 このままでは、安全性が高いと思って選んだクルマが実は最も危険なクルマだったという気の毒なケースもあり得るため、冊子「自動車安全情報」を入手し、「1996年度 前面衝突安全性能試験結果」への私なりの評価や意見などをここに記すことにしました。

 

< 補足 >

  1. 作成にあたり、冊子「自動車安全情報」を入手しましたが、写真がいくらか鮮明であること以外は自動車事故対策センターのホームページのものと差異はないようです。
  2. 著作権などの都合により、写真は省略しました。 ご面倒ですが自動車事故対策センターのホームページに見に行ってください。
  3. 私は自動車および自動車関連企業に勤務していない全くの非業界人の一般ユーザーなので、裏話のような内容ではありません。 あしからず。

【前面衝突試験とは…】

 代表的な前面衝突試験として、次の2種類がある。 「今回の衝突試験」で行われたのは1番の方。

  1. 対リジッド・バリア / フルラップ前面衝突試験
    ・コンクリート製のバリア(障壁)に、自動車をフロントの全ての面を正面衝突させる試験。
    ・ダミーに与える衝撃は最も強い。
    ・シートベルトやエアバッグなどの乗員拘束装置の評価に適している。
    ・同型車同士でズレや傾きのない完全な正面衝突をした場合と同等の結果を示す。
     
  2. 対デフォーマブル・バリア / オフセット前面衝突試験
    ・アルミハニカムを装着したバリア(障壁)に、自動車のフロントの運転席側の40%を正面衝突させる試験。
    ・ダミーに与える衝撃は弱いが、車体の変形が大きい。
    ・車体の変形による乗員への加害性の評価に適している。
    ・アルミハニカムバリアは衝突相手の車輌前部の模擬体で、形状や強度について定められている。

 「今回の衝突試験」の評価は、ダミーに取り付けられた加速度計により 頭部傷害値(HIC)胸部合成加速度(胸G) を測定し、ばらつきを考慮したうえでおのおの4段階に区切り、その組み合わせをアルファベットによる6段階(最高は AAA、最低は D)で表記されている(※)。 なお、大腿部荷重は、測定値の再現性が低いため評価の対象外とされている。
※ 傷害基準値(HIC=1000,胸G=60)に収まっているクルマには A評価 が、HIC<500 または 胸G<45 のどちらか片方を満たしているクルマには AA評価 が与えられている。 両方を満たしている場合は AAA評価 になる。

 日本の前面衝突基準(道路運送車両の保安基準第18条)では1の試験を50km/hで行うことになっているが、「今回の衝突試験」では55km/hで行われた。 速度は10%増しだが、クルマの持つ運動エネルギーは12.1%増しとなる。

- MEMO -

 今回のテストのようなフルラップ正面衝突試験はダミーに与える衝撃は最も強い。 一方、オフセット衝突試験は車体の変形が大きく、乗員への加害性評価に適している。
 両試験の形態の違いを考慮すると、フルラップ正面衝突試験でさえキャビンの変形が目立つ造りのクルマは、実際の事故でオフセット衝突をしてしまうとキャビンの変形量がとても大きく、身体が押し潰されてしまう可能性が高い。 逆に、車体の変形が大きいオフセット衝突試験において(生存空間の確保を目的として)キャビンの変形量が少ないクルマの場合、フルラップ正面衝突試験では変形量の少なさ(=丈夫さ)ゆえにHICと胸Gの値を低く抑えるのは難しくなる。

 

2

【衝突テストの再評価】

 「自動車安全情報」冊子の記述の抜粋と、私の再評価や意見などです。

 

【 記載例 】

▼ メーカー名・車名 (デビュー年)

〔乗員傷害〕 ・・・ 運転席 / 助手席の“アルファベット評価”
〔足元フロア〕 ・・・ 足元フロアの変形についての「自動車安全情報」冊子の記述
〔その他〕 ・・・ その他の「自動車安全情報」冊子の記述など
〔再評価〕 ・・・ 私の再評価や意見など

 


▼ トヨタ コルサ 1300 AX (1994.09)  <自動車事故対策センターのホームページを見に行く>

〔乗員傷害〕   A / B
〔足元フロア〕
  • 運転席側が変形、助手席側が比較的大きく変形していた。
  • ブレーキペダルの後退量が比較的大きかった。
     
〔その他〕
〔再評価〕
  • 助手席側の足元フロアの変形とともに共にAピラー上部とサイドシルの変形がとりあげられてはいるが、Aピラーの変形は他車と比較しても、とりたてて大きいようには見えない。 左側面前部の写真(☆2)ではサイドシルの変形部位が黄色の○で囲ってあるが、その前方にあるドア前端の床下の変形を見逃しているのはいただけない(※助手席側の足元フロアの変形量と関係があるかもしれない)。
  • このクルマは、まだ「GOA」ではない。 次期モデルに期待。
     

 


▼ 日産 パルサー 1500 CJ-II (1995.01)  <自動車事故対策センターのホームページを見に行く>

〔乗員傷害〕   A / A
〔足元フロア〕
  • 変形していた。
     
〔その他〕
  • (特になし)
     
〔再評価〕
  • プレスドアのため、外観写真からはキャビンの変形が判断しづらい。
  • 衝突の瞬間の写真では右ドアが後退、前後から押される力でドアパネルが変形している。
  • 足元フロアのクローズアップ写真が撮られているのはパルサーとセフィーロだけなので他車との比較は難しいが、大きく変形している。 助手席ダミーの足首の曲がり量は大きめで、足首骨折の危険性が大きい(※足首に危険を及ぼすほどに足元フロアが変形しているにもかかわらず「衝突エネルギーの吸収はエンジンルーム内でほぼおさまっている」と評価されているが、エンジンルームとの隔壁たるキャビン前端部もエンジンルームなのだろうか?)
  • 運転席側ダミーの写真(☆3)では「姿勢が崩れていない」と評価されているが、そのわりには左足首がずいぶんと右側に移動している。 ダミーの右足が載っている部分のフロアがドア開口部の縁取りとの間に隙間が生じるほどに、めくれ上がるように後退している所に注意。 また、ダミーの右手首の下あたりにブレーキペダルとおぼしきものが写っているが、果たして? セフィーロと同様にブレーキペダルの後退量が比較的大きかったかどうか、ぜひとも実車で確認してみたいものだ。
  • クラッシャブルゾーン+セフティーゾーンの「ゾーンボディー・コンセプト」を標榜する日産車だが、今回のテストでは「セフティーゾーン」の前部もクラッシャブルゾーンとして機能しており、前席乗員の安全性は芳しくないようである。
     

 


▼ トヨタ コロナ 1800 プレミオ E (1996.01)  <自動車事故対策センターのホームページを見に行く>

〔乗員傷害〕   A / A
〔足元フロア〕
  • 変形は比較的少なかった。
     
〔その他〕
  • 衝突時の衝撃により助手席のシートスライドの右側ロック機構が破損した。 ダミーの前方への移動量が増えたため、傷害値が低めに出た可能性がある。
     
〔再評価〕
  • 写真では、Aピラーの変形やドア立て付けの変化が最も少ない。 加えて、足元フロアの変形が比較的少なかったと評価されている。 堅牢なキャビン(車室)による生存空間の確保が「GOA」の謳い文句だが、それが実証されたと言える。
  • 頭部傷害値と胸部合成加速度の値はいささか高め(但し、傷害基準値は超えていない)であるが、これはオフセット衝突での生存空間確保をも目的とした設計のためで、妥当な結果であると思う(※オフセット衝突に耐え得る強度にすると、正面衝突では強すぎるために値は高めにならざるを得ない。 過剰に強いと正面衝突での傷害値が危険な域に達するが、当然それを避けるように設計しているはず)。
  • このテストでは(助手席以外は)平凡な評価に終わっていて大したことはないように思えるが、よく見るとキャビンの変形が最も少ない。 堅牢なキャビンにより、実際の衝突事故時の乗員の負傷は今回のテスト車の中では最も少なくなるのではないかと思われる。
     

 


▼ VW ゴルフ 2000 GLi (1992.??)  <自動車事故対策センターのホームページを見に行く>

〔乗員傷害〕   A / A
〔足元フロア〕
  • 変形していた。
     
〔その他〕
  • ボディサイドに変形が及んでいた。
  • 運転席側のドアの開扉性が「両手で開いた」であった(※デリカ・スペースギア以外の他車は「片手で開いた」)。
  • シートベルト・プリテンショナー装備
     
〔再評価〕
  • ドアの後退は少なめだが、ルーフ中央が変形している。
  • 運転席側のダッシュボード下部のせり出しが大きめ。 また、ドアを開けた写真では右のAピラーに凹みが見られるが、折れ曲がった痕跡と思われる。
  • 小型車では安全性の象徴のように思われていた感のあるゴルフだが、今となってはモデルチェンジが近い古いクルマのためか、はかばかしくない結果であった。 次期モデルに期待。
     

 


▼ スバル レガシィ(ワゴン) 2000 Brighton (1993.10 / 1996 改良)  <自動車事故対策センターのホームページを見に行く>

〔乗員傷害〕   AA / AA
〔足元フロア〕
  • 変形は比較的少なかった。
     
〔その他〕
  • 縦置きエンジンがフロアトンネル部へすべり込むように後退したため、エンジンルームが効率よく潰れ衝突エネルギーを吸収していた。
  • シートベルト・プリテンショナー装備
     
〔再評価〕
  • サッシュレスドアのため、外観写真からはキャビンの変形が判断しづらい。
  • 試験車の中で最も大きくドアが開きかけている事に注意。 ドア前端部(床〜Aピラーの付け根)の後方への倒れ込みが大きかったためと思われる。  また、ルーフにシワが見られるが、これも倒れ込みが大きかった事のあらわれである。 「走行時のボディ剛性が高ければ衝突に対して高強度である」とは限らない事の見本。
  • エアバッグの当たり具合があまり良くない。 前述の“倒れ込み”によりダッシュボード両脇が車室側に押され、ダッシュボード(ピラー to ピラー)が弓なりに変形しているのだろうか? ぜひとも実車で確認したいものだ。
  • ダッシュボードの左端に妙なシワが生じているが、前述の“倒れ込み”によるものと思われる。 フロントガラスの両端のひび割れが妙に目立つのも、おそらくは同じ原因であろう。 実際の事故でオフセット衝突をしてしまうとキャビンやドアはどうなるか?
  • 縦置きの水平対向エンジンが床下へすべり込むような形となり、エンジンルームの潰れしろが大きくとれたのが良い結果につながったと思われる(ベンツAクラスみたいなものか?)。
  • 縦置きの水平対向エンジンがもたらすメリットを持ちながら、それを活かしていない弱そうなキャビン。 “両席AA評価”に慢心することなく、キャビンの強化につとめて欲しい。 現状ではオフセット衝突時の不安が大きい(※私がレガシィのユーザーだから・・・)
     

 


▼ 日産 セフィーロ 2000 エクシモ(1994.08)  <自動車事故対策センターのホームページを見に行く>

〔乗員傷害〕   A / A
〔足元フロア〕
  • 比較的大きく変形していた。
  • ブレーキペダルの後退量が比較的大きかった。
     
〔その他〕
  • (特になし)
     
〔再評価〕
  • プレスドアのため、外観写真からはキャビンの変形が判断しづらい。
  • 足元フロアの変形が大きめと評されているが、それが外観からは容易に判断できないところに注意。
  • ダッシュボード下部の車内への移動が目立つが、これは「セフティーゾーン」前端部の強度不足を意味する。
  • クラッシャブルゾーン+セフティーゾーンの「ゾーンボディー・コンセプト」を標榜する日産車だが、今回のテストでは「セフティーゾーン」の前部もクラッシャブルゾーンとして機能しており、前席乗員の安全性は芳しくないようである。
     

 


▼ ホンダ CR−V 2000 (1995.10)  <自動車事故対策センターのホームページを見に行く>

〔乗員傷害〕   A / AA
〔足元フロア〕
  • 変形していた。
     
〔その他〕
  • いわゆるヒューズベルトが作動、衝突後のダミーは座席中央部付近まで前方に移動。
  • ボディサイド部(Bピラー上部)に変形が見られた。
     
〔再評価〕
  • CR−Vのエンジンキーは危険な位置にある。 いわゆるヒューズベルトにより前方に大きく移動したダミーの右膝が、エンジンキーにジャストミートしているところに注目。 生身の人間なら膝に大きな裂傷を生じるか、膝の骨が砕けているであろう。 そして、脚がどうなろうとも、このテストで言うところの乗員傷害の評価には関係がないところに注意。
    ※エンジンキーはステアリングコラムの右側の下の方にあるので、チルトステアリングを上の方にセットすれば当たりにくくなる。 この部分は他のクルマにも流用されているが、相対的な位置が異なるためか、CR−Vほど当たりやすくはないようだ。 通常の乗車姿勢では体を前に動かしてもキーには届かないが、衝突試験のダミーは膝が上がっている事に注意。
  • CR−Vのステッキ型パーキングブレーキは危険な位置にある。 写真には写ってはいないが、ステアリングコラム左側にあるパーキングブレーキが膝や脚に突き当たっている可能性もある。 樹脂製のノブに当たっても痛いが、これが割れるほど強く当たった場合、金属柱が露出して脚に刺さる可能性も考えられる。
  • ダッシュボード下部の室内側への移動が目立つが、これらはエンジンルームの強度が不充分でキャビン前部もクラッシャブルゾーンとして供されている事を意味する。 加えて足元フロアの変形も報じられており、足首の骨折の危険性はとても高いと思われる。
  • 助手席はAA評価であるが、キャビンを潰すほど変形量が大きいことに加えてヒューズベルトでダミーを前方に移動させて上半身への加速度を減じている事がAA評価につながったと考えられる。 また、前方に移動したダミーの膝が叩き割ったのかグローブボックスのフタが割れたようなものが見えるが、これは裂傷の危険性がある。
  • フロアの強度が大きく不足しているためか、ボディが横から見てV字型に折れ曲がったようである。 前ドアの窓枠がBピラー大きく覆い被さっていたり、Bピラーが前傾しているように見えたり、Bピラー直上のルーフが凹んでいたり、ドアとAピラーとの間に大きな隙間が開いていたりと、Aピラーの角度が変化しているように見えたりと、凄まじい変形をしている。 カタログには『大断面フロアフレームを採用した高剛性キャビン』と書いてあるが・・・(実は、カタログの衝突テストの写真でもキャビンが大きく変形している)
  • “アルファベット評価”だけを盲信することがいかに危険かを私たちに教えてくれる良い見本である。 脆弱なボディの、ひどく危険なクルマ。
  • あまりに変形が大きいく、写真ではどこを基準にして判断すべきか難しいので、ぜひとも実車を見てみたい。 また、オフセット衝突試験の結果も見てみたい。 個人的には最も興味がある1台。
     

 


▼ 三菱 ディアマンテ 2500 25V(1995.01)  <自動車事故対策センターのホームページを見に行く>

〔乗員傷害〕   A / A
〔足元フロア〕
  • 変形は比較的少なかった。
     
〔その他〕
  • いわゆるヒューズベルトが作動、衝突後のダミーは座席中央部付近まで前方に移動。
     
〔再評価〕
  • サッシュレスドアのため、外観写真からはキャビンの変形が判断しづらい。 また、写真が露出オーバー気味のためキャビンやルーフの変形の判断が困難である。
  • 足元フロアの変形も比較的少ないと報じられている。
  • ドア前端部(床〜Aピラーの付け根)の後方への倒れ込みが若干認められる。
  • 上級車なのだからヒューズベルトなどというせこいものはやめてフォースリミッター付きシートベルトを採用するべきだ。
  • 白いクルマを撮るにあたってカメラの測光方式を考慮していないためか、写真のクルマが露出オーバーとなり外観からの評価に支障をきたしている。 次回のテストでは白いクルマは避けるべきである。
     

 


▼ ホンダ オデッセイ 2200 S (1994.10)  <自動車事故対策センターのホームページを見に行く>

〔乗員傷害〕   A / A
〔足元フロア〕
  • 変形していた
     
〔その他〕
  • (特になし)
     
〔再評価〕
  • 左前ドアが比較的大きく後退し、前ドアの窓枠は後ドアの窓枠に覆い被さっている。 
  • ドアが後退している割にはドアとAピラーとの隙間が少なめなので、Aピラーも後退していると思われる。 おそらくルーフに若干の変形が見られるはずだが、残念ながらその有無を確認できるような写真はない。
  • いわゆるヒューズベルトが装備されているはずだが、延びなかったらしい。
  • 面白いことに、後発のCR−Vより丈夫そうだ。 ちなみに車重はCR−Vより140kgほど重い。
     

 


▼ 三菱 デリカ・スペースギア XG 2800 ハイルーフ (1994.05)  <自動車事故対策センターのホームページを見に行く>

〔乗員傷害〕   A / B
〔足元フロア〕
  • 変形は比較的少なかった。
     
〔その他〕
  • 運転席側と助手席側のドアの開扉性が、それぞれ「工具を要する」,「両手で開いた」だった(※ゴルフ以外の他車は「片手で開いた」)。
  • ドア枠(右サイドシル)が比較的大きく変形している。
  • フロントガードバー装着車
     
〔再評価〕
  • 助手席側ドアが大きく後退している。
  • 運転席側ドアの開扉性が特に悪かった事の理由として右サイドシルの変形がとりあげられているが、助手席側ドアは後退しているのに対して運転席側ドアが後退していない、すなわち運転席側ドアの後端がBピラー側に噛み込んでいる事に注目し(そして、それは写真にはっきりと写っている)、噛み込みが起きた原因がドア端などの形状によるものかなどについて推定すべきである。
  • ドア以外のサイドガラスを全て外されているのはなぜだろう? 1BOXだからか?
     

 


【同じ評価でも大違い!】

 同じ “アルファベット評価” でも、安全性はこんなに違う。 写真をよく観察すると、内容の違いが見えてくる。

 

● 例1:助手席評価がAAの、レガシィとCR−V

 堅牢なキャビンとは言い難いレガシィではあるが、水平対向エンジンが床下に潜り込むように移動したため変形量を大きく取ることができ、AA評価につながったようである。 足元フロアの変形も比較的少なかったと評価されている。

 一方のCR−Vは足元フロアの変形が見られるばかりかダッシュボード下部の室内側への移動が目立つが、これらはエンジンルームの強度が不十分でキャビン前部が潰れていることを意味する。 キャビン前部を潰すほど変形量が大きいことに加えてヒューズベルトでダミーを前方に移動させて上半身への加速度を減じている事がAA評価につながったと考えられる。 また、前方に移動したダミーの膝が叩き割ったのかグローブボックスのフタが割れたようなものが見えるが、これは良くて擦過傷、悪くて裂傷の危険性がある。

 両車の間にはこのような違いがあるが、頭と胸の加速度の値のみを持って、双方とも等しくAA評価が与えられている。

 

● 例2:運転席評価がAの、CR−Vとコロナ・プレミオ

 同じA評価であっても頭部傷害値(HIC)と胸部合成加速度(胸G)はプレミオの方が高かった。 一方、キャビンの変形はプレミオの方が圧倒的に少ない(ほぼ原型を保っているプレミオと、Aピラーが大きく後退してルーフが変形すると共に車体がV字型に曲がっているCR−V。 CR−Vの車体や足元フロアの変形の有り様を「効率よくエネルギー吸収できたためと推定される」と評価しているが、彼らが言うところの「効率」とは何なのだろう?)。
 上半身(頭と胸)の加速度ではプレミオの方が分が悪いものの、重大な危険を示す値ではない。 一方のCR−Vはヒューズベルトにより前方(座席中央部付近)に大きく移動したダミーの右膝がエンジンキーにジャストミートしており、おそらく裂傷は必至、運が悪ければ骨折が待っている。

  今回の評価方法では同じA評価であってもプレミオの方が頭部傷害値(HIC)と胸部合成加速度(胸G)の数値としては大きい(=良くない)が、実際の事故で多いというオフセット衝突を視野に入れると、この結果は妥当なものであると言える。 一方のCR−Vは右膝に重大な危険を及ぼす構造でありながら、『乗員傷害』の評価として全く言及されていない。
  両車の間には「より危険な(そして頻度の高い)衝突形態を視野に入れた設計」と「頭と胸の加速度のみが小さければ後はお構いなしの設計」とでも形容すべき隔たりがあるが、双方とも機械的にA評価が与えられているに過ぎない。

 

TOP PAGEUP→Update : Nov.04.1997 (First Release : Jul.27.1997)